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副腎ホルモン検査の解釈-コルチゾール-

コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンです。コルチゾールが過剰だとクッシング症候群が、欠乏していると副腎皮質機能低下症が疑われます。しかしコルチゾールの値はストレスや日内変動(朝が高くて夕が低い)、薬剤などによる影響を受けるので、解釈に悩むことは少なくありません。そのため、コルチゾールの検査は、できれば内分泌内科でおこなってもらったほうが良いと思います。以下は、コルチゾール値の検査の結果が紛らわしい事例を挙げて行こうと思います。

 

※コルチゾール値は原則、ACTH(副腎皮質ホルモン刺激ホルモン)とセットで解釈します。

ACTHの基準範囲は6.6~63.2pg/mL、コルチゾールは4.0~18.3μg/dLです(測定キットによって異なります)。

検査値は実例を参考にして少し脚色しています。

 

①血圧が高くて内科を受診。ACTH 70pg/mL(高値)、コルチゾール 20μg/dL(高値)。ACTH依存性クッシング症候群の疑いで内分泌内科に紹介。

→ペットが危篤であることによる強いストレスで血圧・ACTH・コルチゾールが上昇していた。その後ペットは亡くなり、気持ちの整理がついた後の検査では、いずれも正常化していた。

 

②倦怠感があり内科を受診。ACTH 7.0pg/mL(正常範囲内)、コルチゾール3.0μg/dL(低値)。中枢性副腎皮質機能低下症の疑いで内分泌内科に紹介。

→夜勤をしており昼夜逆転の生活パターンだった。採血をされたのは午前9時のため、通常の日内変動パターンだと考えられた。

 

③長年放置してきた高血圧で内科を受診。ACTH 5.0pg/mL(低値)、コルチゾール2.0μg/dL(低値)。中枢性副腎皮質機能低下症の疑いで内分泌内科に紹介。

→検査の1週間前に耳鼻科で花粉症の薬を処方してもらっており、その薬の成分にベタメタゾン(ステロイド剤)が含まれており、これによる検査値異常と考えた。その薬の使用期間はまだ2週間だったため、中止によるステロイド離脱症候群のリスクは低いと考え、中止して再検査したところ、ACTHとコルチゾールは正常範囲内になっていた。

 

④通院中の内科で短期間での体重増加や体型変化を指摘された。ACTH 40pg/mL(正常範囲内)、コルチゾール 25μg/dL(高値)。ACTH依存性クッシング症候群の疑いで内分泌内科に紹介。

→過多月経に対して低用量ピルを内服しており、それによるコルチゾールの偽高値と考えた。体重増加もあり、念のためピルを十分期間中止して再検査したところ、ACTHとコルチゾールは正常範囲内だった。

 

⑤食思不振・嘔吐があり消化器内科を受診。顕著な低ナトリウム血症があり、ACTH 16 pg/mL(正常範囲内)、コルチゾール6.0μg/dL(正常範囲内)だった。中枢性副腎皮質機能低下症の疑いで内分泌内科に紹介。

→ストレス下としては、ACTHやコルチゾールの上昇反応が不十分で、中枢性副腎皮質機能低下症は否定できないと考えた。急性期治療の後、各種負荷試験を行い、中枢性副腎皮質機能低下症の診断となった。下垂体MRI検査で下垂体に巨大な腫瘍が見つかった。

 

このようにコルチゾール値の検査は、結果の解釈が紛らわしいことが多いです。コルチゾールだけでなく、一般的にホルモン検査は熟練していないと解釈に悩むことが多いです。

また、基準範囲内であれば異常がないというわけでもありません。異常かを確かめるために必要な負荷試験は、通常の内科ではやっていないことが多く、総合病院の内分泌内科でも外来負荷試験はやっておらず、入院下でしか負荷試験をやっていないこともあります。

当院はクリニックでありながら、外来負荷試験も行っています。またクリニックとしては珍しく、ACTH・コルチゾール、レニン・アルドステロンの検査値も即日結果が出てきます。副腎ホルモンが気になる方、他の内科を受診して異常を指摘された方など、是非当院の受診を検討してみてください。